旅行作家 ひいきの宿 No1
旅行作家No79



「旅行作家 ひいきの宿 第2集」が 「旅行作家の会」から発売(1000円)されています。私が、取材させていただいた岐阜新穂高温泉の2軒のお宿での記事をアップします。




岐阜県新穂高温泉

宿のモットーを生かして、心からの
あたたかさを追求するぬくもりの
宿 
           
白雲荘

      
     
「新・穂高ロープーウェイ」で2156mまであがる。 「白雲荘」は、くつろげる家庭的なお宿
初夏の新緑が目にあざやかな6月、いで湯の里、新穂高温泉にある、ぬくもりの宿「白雲荘」を訪れた。槍、穂高など雄大な山々を背に佇むこの家庭的な和風旅館は、旅館の低迷が叫ばれるなか、客本位に、努力している。

心から寛げる休日を約束してくれる宿の秘密を解くカギは、若いご主人、今田英明氏が自ら作るホームページにあるかもしれない。「白雲荘」のモットーが、いささか、はっきりと示されているのだ。いわく<当館は、客室8室(定員は38人、実質は満室でも20数名)の小さなお宿です。個人、家族連れ、少人数のグループのお客様対象で、団体のお客様は一切お断りしております。また、コンパニオン同席の宴会には対応できませんし、カラオケ設備や二次会処もございません。ドンチャン騒ぎをご希望のお客様にはとっても不向きな宿です。「笑」私自身もそうなのですが、「良質な温泉にのんびり入って、おいしい料理を食べたい。」というようなお客様に最適のお宿だと自負しております。小さな宿ゆえに、旅行業者との提携もございませんし、(ご予約は原則として直接予約のみ)今のところカードによるご支払いは一切できません。>あっぱれなコンセプトではないか。

館内は、奥飛騨の伝統の色「白と黒」を基調に、飛騨ひのきをふんだんに使われ、落ち着いた雰囲気である。高い天井のラウンジで、香り高いコーヒーをいただくと、ゆったりと時間が流れる気がする。気持ちのよい和室のほか、特注の家具が置かれている洋室もある。こちらは、女性客に喜ばれそうな白木の香りが漂う山小屋風だ。

食事は、平成11年に完成した掘りごたつ式個室食事処「かすみ庵」でいただくことになっている。ずらりと並ぶ料理は、ご主人自らが包丁を取る山菜懐石である。サービスしてくださった女将さんは、ご主人のお母様だ。優しい口調でお料理の説明をして下さる。山菜は、雪深いところほど、成分が良いそうで、採草から下ごしらえ、保存まで手のかかるものだということを知って感心する。中華風にゴマ油で味付けされた「くごみ」という山菜が気に入った。「ふき味噌」は少しほろ苦く、「葉わさび」は、つんと来る。しかし、えぐみも含めて美味しいと感じられるのは、私も少し大人になったということだろうか?焼き物は、竹串に刺した岩魚の塩焼きだった。これは、かぶりついて食するのが、一番だ。お造りは「岩魚の糸造り抹茶洗い」で、抹茶で魚のくさみをとり、山椒の葉を細かく混ぜてあるのだが、あっさりした川魚の味のアクセントになっている。肉料理として「飛騨牛の握りずし」という珍しいものが出た。上質の飛騨牛1頭に3kgしかないイチボという部位の生肉のとろけるような食感と肉の甘さが、口のなかで広がって絶品だった。季節の野菜の天ぷらにお腹がいっぱいになるも、デザートは別腹。自家製ブルーベリーのシャーベットが、口当たりよく溶けていく。

さて、「白雲荘」には、共同で掘った2種類の天然温泉が引き湯されている。1つは、通称「蒲田の湯」で泉質は、炭酸水素塩線、源泉温度は、92度、引き湯量は毎分約50リットル、胃腸病、婦人病に効能があるとされる。このお湯は、主に2つの貸し切りの露天風呂に利用されている。打たせの湯と滝の湯と、絶対2つとも入ってくるべきだ。私の訪れたときは、つつじの花が満開で、月明かりに美しかった。もう1つの温泉、通称「栃尾の湯」は、泉質は、単純泉、源泉温度約72度、引き湯量は、毎分約100リットル、こちらは、主に3つある内風呂や館内の暖房、給湯に利用されている。

「白雲荘」は、IT化の時流に対応し、四季折々さまざまなアイデアを打ち出し、実行している。冬は、「雪見酒プラン」が好評だったが、今は、夏限定の「お好み浴衣プラン」を開催している。女性客は、豊富に用意された浴衣から好きなものを無料で、レンタルできるのだ。奥飛騨の特産物「さんしょ」のように、「小粒でもぴりりと辛い宿にしたい」というご主人の夢は、着実にかない、新たなるリピーターを獲得しつつあるようだ。

▼所在地  〒506−1421 岐阜県吉城郡上宝村新穂高温泉
▼TEL (0578)9−2467
▼ 交通 JR高山本線高山駅から、濃飛バス新穂高温泉行きバス1時間20分、「新穂高温泉口」下車すぐ
▼ 車 高山市街から国道158・471号で約50km
▼ 1泊2食つき 1万5千円―2万円 
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岐阜県新穂高温泉

河原から湧き出る野趣あふれる露天風呂から、
穂高連峰が望める癒しの温泉宿
こまぐさ館

雄大な日本アルプスを望める新穂高ロープウェイ 寛げる家庭的なお宿「こまくさ館」

日本でも今や指折りとなった露天風呂天国、岐阜県の奥飛騨温泉郷。雄大な北アルプスの大自然のなかに、平湯、福地、新平湯、新穂高温泉など情趣豊かな温泉地が続き、情緒あふれる露天風呂の宝庫となっているその中で露天風呂ブームのさきがけとなったのが、最奥部にある新穂高温泉だ。

高山駅から、濃飛バスで、約1時間20分、車で1時間。どんどん山の中に入り、より緑濃く、山の澄んだ空気が冴え渡るかのようだ。山あいを流れる蒲田川は、槍ヶ岳や穂高連峰の水を集めた右俣谷と、双六岳や笠ヶ岳の水を集めた左俣谷が、合流した川で、その清流に沿って、昔ながらの旅館が立ち並ぶ。

山に咲く、かれんな「こまぐさ」の花の名をとった「こまぐさ館」は、「新穂高温泉口」停留所の真向かいのちょっと古風な2階屋だ。玄関わきの「花壇」には古い木の車輪がたてかけてあり、暖かな雰囲気を醸し出している。創業は、昭和39年で、二代目のご主人は、アムステルダムの「ホテルオークラ」に10年も勤めていたということだが、帰ってきて故郷の旅館を継いだということだ。「都会にはない良さが、ここにありますよ」としみじみ言われるご主人の言葉には、深くうなずきたくなるような説得力があった。ロビーに、ご主人の骨董コレクションが、ガラスケースに入っているのが目につく。刀の鍔から、壺やお皿など、百花繚乱。覗いてみるのが、楽しい。飼い猫の「どんべい」もあいさつに現れた。

客室は、全部で5室とこじんまりしている。案内してもらった部屋は、清潔な和室で、すぐ荷を解き、寛ぎたくなるような居心地の良さだ。明るくもてなし上手な女将さんと仲良く出迎えられると、何か親しい人の家に、遊びに来たかのような気になる。

宿の裏手に流れる蒲田川の河原は、昔から、スコップなどでちょっと掘ると、温泉が出てくる土地柄だったという。元々は、近くの笠ヶ岳鉱山で働いていた人や、登山帰りの山男や、山の木を切り出す木こりの人たちが、河原を掘って、手ごろな石で囲み、簡単な湯船を造って自由に入っていたそうだ。正に、本当の天然露天風呂。宿より先に、露天風呂があったわけだ。

「こまぐさ館」の露天風呂も、現在のご主人のお父さんが、自ら掘られ石を積み上げた手造りのものだ。ただし、河原だから、大雨が降ると、風呂が流れてしまう。そこでまた新しく掘って造るという悪戦苦闘が続いたそうだ。露天風呂から、天気のいい日には、目前に新穂高連峰を仰ぎ見ることができ、開放感に浸れる。旅の疲れも、ゆっくりと、熱めのお湯に溶けていくようだ。お坊さんの木像が何体も置いてあったので、伺うと、これまたご主人のお父さん作の木彫りで、「円空彫り」というそう。この露天風呂も「円空の湯」と名づけられている。湯量豊富なことが、ご自慢で、湯を巡回して使うことはないとのことだ。露天風呂の周りは、家庭菜園になっており、自分の畑で採った野菜を、てんぷらに出すという。これからいただく食事の食材を見届けると、いやがうえにも夕食への期待が高まる。

おまちかねの食卓には、奥飛騨のならでの郷土料理が並んだ。とれたてのイワナお造りは、身がしまっていて繊細な味だ。飛騨の冷酒の芳醇な味わいが、湯上りの体全体に行き渡って幸せな気分になる。ぜんまいや、姫竹の子の山菜は、低コレステロールで、健康に良いというだけでなく実際、おいしく自然の恵みを口にしているという実感がある。圧巻は、名物の飛騨牛の朴葉味噌ステーキだ。(\3500  別料金 2人で1枚)大きな朴(モクレン科の落葉高木)の葉に、特製の味噌を塗り、飛騨高原の牧場でのびのび育った飛騨牛を乗せて焼く。味噌が少し焦げるのが、香ばしい。とても、柔らかくコクのある味付けは、飛騨の味として忘れがたい。1泊2食で、1万円から1万2千円。部屋食なら1万3千円。リーズナブルな価格に、若いカップルも多く訪れるという。根強い固定ファンが多いのもうなずける。「都会の生活に疲れたら、ふらりと訪れてみたい。リフレッシュに最適の宿だ。  

▼所在地  〒506−1421 岐阜県吉城郡上宝村新穂高温泉
TEL (0578)9−2408
 交通 JR高山本線高山駅から、濃飛バス新穂高温泉行きバス1時間20分
     「新穂高温泉口」下車すぐ
 車 :高山市街から国道158・471号で約50km1泊2食付 
 1万円-1万2千円 (部屋食1万3千円)


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