クリスチャンウルブリヒト工房
クリスチャンウルブリヒト工房は、現在、エルツ工芸品を製作する工房のなかで、最大規模の会社といっていいでしょう。
特に、くるみ割り人形と、煙り出し人形については、その種類と、豪華な大型のシリーズでは、他の工房を、断然、引き離しています。
また、オーナメントの種類においては、これほど、たくさんの種類のオーナメントを生産しているところはないでしょう。
復活祭に需要のある春のうさぎ、ピラミッドも制作していますから、エルツの木工芸品のカテゴリーを、網羅していると言っていいでしょう。
クリスチャン・ウルブリヒトの公式サイトの動画
くるみ割り人形の制作過程が、よくわかるような動画です。
その歴史と、会社の理念やモットーを、担当者に、インタビューしましたので、私のコメントも添えて、ご案内します。
「エルツの知られざる歴史」でも、ご紹介したように、エルツ山脈は、鉱山業で栄えた土地柄でしたが、それが衰退すると、炭坑夫たちは、木工品を加工する職人や、木彫り職人として、生計を立て、やがて、起業するという道を歩む工房が、出てくるのです。
その中でも、ウルブリヒト工房は、異色でした。
① 会社は、いつの創立ですか?
1928年です。クリスチャンウルブリヒトの父、オットー・ウルブリヒトが、彼の名を冠した会社を、ザイフェンに、設立しました。
家族経営の会社が、出発点でした。
オットーの卓越した経営力と、独創的な作品を創作しつづけ、発展し、1936年パリ万博では、「子供部屋の時計」と「聖歌隊」が、金賞を獲得するほどでした。
しかし、第二次大戦の敗戦と、その後の共産勢力による財産収奪により、ザイフェンでの生産を辞め、オットー・ウルブリヒトは、家族を連れて、ドナウ川のほとりに近いLauinge(ラウインゲン)の街に会社を再建しました。
東西ドイツ以前に、設立され、すでに中小企業に成長していたオットー・ウルブリヒトの会社は、当時の西ドイツに出たのです。(出るしかなかったという選択だったのでしょう)厳しい選択でしたが、いちはやく、資本主義国西ドイツで、経営をしたのは、ウルブリヒトにとって、吉と出たと思います。
自由な発想、競争のもと、いち早く、アメリカとの取引も始まり、アメリカ人の嗜好に合わせた、ちょっとディズニーのキャラクターのような商品ラインもあるのが面白いところです。
1968年に、オットーの息子のクリスチャン・ウルブリヒトが、後継者となり、その後、東西ドイツが統一してから、ザイフェンにあった父の会社を買い戻し、ザイフェンで、商品を製作しています。
現在は、クリスチャン・ウルブリヒトの息子のギュンター・ウルブリヒトに引き継がれていますが、社名は、「クリスチャンウルブリヒト」となっています。
② 何人くらいの従業員がいますか?
90名くらいです。
③ どれくらいの商品点数がありますか?
オーナメントも含めて、1100点以上あります。
④ これだけは、特別という商品がありますか?
60-70cmの豪華な衣装をまとい、木製工芸品の技術を駆使したプレミアムなくるみ割り人形
⑤ 特に人気の商品は?
煙り出し人形と、くるみ割り人形
⑥ 御社としての特徴は?
弊社の歴史は、独特で、東西ドイツ分裂前に、ザイフェンで創立し、1968年西ドイツに、移転したこと。
当時、西ドイツで、エルツ工芸品を、制作する会社は、まれでした。
やっぱり、ここですね!ドイツの歴史に、翻弄されながらも、熱い情熱をもって、細かな部分までの手の抜かないモノ作りで、躍進してきたクリスチャン・ウルブリヒトは、エルツ工芸品をリードする会社となっています。
⑦ 会社としての理念は?
木ほど美しいものはない
木にほれ込んだ「クリスチャン・ウルブリヒト」らしい理念を象徴する言葉だと思います。
木から作る創作物には、かけがえのない個性を生み出せると考えているからだと思います。
高品質の職人技
旋盤を使って(ろくろ引き)され、各商品のパーツが、削り出される工程が、始まります。
この旋盤技術は、精密作業で、長年の経験が必要です。
1つの人形のシリーズを作れば、原型となる木工品には、個体差があってはならないのです。
寸法的に、正確な部品を作るには、細心の注意と集中力が要ります。
削り出しの作業を、煙出し人形の胴体、そして下部の部分を作っている画像を、ごらんください。
削っても、旋盤で、手の感覚で、微妙な手加減がされています。この作業は、男性の職人が行うことが多いです。
さて、次は、何ができるのでしょう?
丸く、削ってできたものは、煙出し人形の顔だったのです。
くるみ割り人形の顔ができるまで
くるみ割り人形の顔ひとつとっても、削り出してから、ドリルを刺す位置、削る深さにも、熟練の技によりなされています。
顔と帽子部分は、はめこみ式だからです。
接着
くるみわり人形の足と胴体も、棒のパーツを入れることによって、支えられています。
接着剤は、はみださない程度に、塗ります。塗料が、本体につかないように、慎重に塗ります。
接着剤を塗り、接着を確かめるのは、職人の手です。
私たちも、扱っていて、催事などで、動かすこともあり、たまにパーツが取れてしまうことがあります。
この際に、自分たちで直せるものは、直すのですが、この接着が、意外に難しいのです。
接着剤がはみだしたりして、本職の職人の技を、こういうところにも感じます。
塗りは、専門の塗料を使います。
くるみ割り人形の帽子を描いているところですが、細い筆で、一発勝負、これも、熟練の職人の技です。
塗装は、女性の職人さんが行うことが多いようです。
エルツの工芸品は、一人の職人が、すべてを作るのではなく、分業制です。
旋盤から削り出して本体や、パーツを作る。
塗りの工程、必要なパーツを接着する。
完成品としてのチェックに至るまで、何人もの職人の技が引き継がれて、工房の名にふさわしいものだけが、出荷されます。
商品は、なん十体とまとめて作っていきますが、職人の手仕事の部分が多いのです。
商品であるからには、量産可能でないといけないのですが、エルツの工芸品は、工房としての品質を保つには、一概に、大量生産を目指しているわけではないと思います。
木型は、同じにして、小さなパーツを変えて、バリエーションを作るという工夫も見られます。
クリスチャン・ウルブリヒトは、毎年、個体数、限定版のくるみわり人形、煙出し人形を作ることでも知られています。
何より、世界中のおうちに、エルツの木工品が、届けられるのを、職人は、夢見て、精進してしることがわかる工房の画像を、最後にご覧ください。
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